2017年5月27日土曜日

ワイモバイル,UQ mobileは「ほかのMVNOの邪魔をしている」のか?

 私は,旧イー・モバイル時代からのワイモバイルのヘビーユーザです.そういった立場で,この話題について述べますので,不快に感じる人がいると思います.そういう人は,この記事を読まないことを,強くお勧めします.

 産経新聞社の報道より,ソフトバンクのサブブランドである「ワイモバイル」や,KDDI傘下のUQコミュニケーションズが提供している「UQ mobile」が格安スマホ市場で存在感を発揮する中,他のMVNOや有識者から「携帯大手の資本力を武器にほかのMVNOを邪魔している」などといった批判が寄せられているそうです.
http://www.sankei.com/premium/news/170522/prm1705220003-n1.html

 UQ mobileについては,あまり詳しいことは言えませんが,ワイモバイルについては,旧イー・モバイル時代からのヘビーユーザなので,私なりに意見があります.

 ワイモバイルの前身は,イー・モバイルとウィルコムです.どちらも,3大キャリアに対して,価格やサービスなどで,差別化を図っていた新興のキャリアでした.また,どちらも,多くのMVNOが登場するよりも前から,特徴的なサービスを提供してきました.記憶が定かではありませんが,当時存在していたMVNOはb-mobile(それも,プリペイドのデータ通信サービスのみ)ぐらいだったと思います.

 イー・モバイルは,2008年と,かなり早い時期からスマホによる通信・通話を提供してきました.割り当てられた電波帯の都合で,通話エリアが3大キャリアより狭かったですが,その分,端末代金や月額費用は安かったです.

 私が最初に使ったスマホもイー・モバイルのスマホ(S12HT)でした.新入社員が,端末を一括で買えて,ガラケーと2台持ちしても,月々の費用が払える価格でした.ガラケーがあるので,スマホでは通話をしていなかったため,スマホの月額費用は,基本料金のみだったというのも,大きかったかもしれません.3大キャリアが,個人向けは,まだガラケーを主力としていた頃に,既に,スマホを取り扱っていました.

 ウィルコムは,ウィルコムとなったのは2005年ですが,その前から,PHSによる通信・通話を提供してきました.こちらも,PHSという特性上,通話エリアが3大キャリアより狭かったですが,その分,端末代金や月額費用は安かったですし,なにより,MVNOなどが最近始めている,定額かけ放題は,ウィルコム発足当時から,提供してきたサービスの一つです.

 どちらも,キャリアでしたから,独自の設備を持っていましたし(当然,現在も使用しています),3大キャリアとは,価格やサービスなどで,差別化を図っていました.

 簡単に言うと,多少不便なところはあるが,その分,月々の支払が安価で,特徴的なサービスを展開している,というキャリアでした.

 その後,色々とあり,今のワイモバイル(ソフトバンクのサブブランド)となったわけですが,今のワイモバイルのスマホ向けサービスは,イー・モバイルとウィルコムのサービスをもとに,2014年から提供を始めたサービスです.つまり,今のワイモバイルは,MVNOが増えるずっと前から,特徴的な独自サービスを展開してきたイー・モバイルとウィルコムが,様々な事情により,生まれかわった姿です.そして,イー・モバイルやウィルコムの伝統?は,様々なインタヴュー記事を見る限り,今でも続いているようと思います.

 さて,ワイモバイルが「ほかのMVNOの邪魔をしている」かと聞かれれば,私は「No」と強く答えます.

 ワイモバイルは,ワイモバイルになる前から,3大キャリアよりも安価で特徴的なサービスを提供してきたわけですし(旧イー・モバイルの時のスマホのサービスと,ワイモバイルのスマホのサービスで大きく違うのは,10分の話し放題があるかないかぐらいで,料金は大差がないと思います),今のMVNOのサービスや料金プランなどは,このワイモバイルのサービスや料金プランを真似をしているものが多いように感じられます.
 また,古参のMVNOは,最初はデータ通信を主にサービスを提供してきて,新興のMVNOとともに,通話サービスや通話定額サービスの提供を始めたのは,最近です.
 

 私が考えるに,当初は料金が安く,顧客が集まりやすい,データ通信サービスを主に展開してきたのですが,データ通信サービスだけだと,利益が得にくくなってきたため,利益が得やすい通話サービスに力を入れるようになったのではないか,と思います.
 ところが,いざ,通話サービスに力を入れて,市場に参入したところ,安価な通話サービスは,ワイモバイルが以前から開拓してきた市場で,当然,強い存在感を誇っていました.ワイモバイルはイー・モバイル,ウィルコム時代から,独自の設備・サービスを持っていたわけで,当然,そのための様々な投資をしてきました.

 そんな市場に,自分たちの利益を考えて進出してきたMVNOが,ワイモバイルの予想以上の強さ(というよりも,分かりきっていた事実)に音を上げ,自分たちのお財布事情は棚に上げておいて,総務省などに泣きついたのが,今回の産経新聞の記事ではないかと思います.
 言い換えると,ワイモバイル(イー・モバイルとウィルコム)が開拓してきた市場に,土足で踏み込んだら,当然のごとく,ワイモバイルの反撃を食らったので,役人に泣きついた,と言っても良いのかもしれません.

 MVNOは,大掛かりな設備投資をしなくても,サービスを提供できるわけですから,もっとサービスの独自性で差別化を図るべきなのに,結局は,ほとんど横並びのサービスを提供しているMVNOが多いように感じます.その横並びのサービスでさえ,ワイモバイルのサービスを真似ているものが多いです.
 企業体力が弱いMVNOが多いので,新しいサービスを展開するのが難しいのかもしれませんが,だからと言って,ワイモバイルが,不当に安いサービスで,他のMVNOの邪魔をしていると言うのは,間違っていると思います. 

 私に言わせれば,最初から分かっていた事(現実)なのだから,その分,十分に準備・努力をするべきだったのです.それを怠り,役所に泣きつくのは,筋違いも甚だしいです.
 そして,MVNOの考えに賛同する「有識者」とやらも,もう少し,勉強するべきだと考えます(有識者ってどういった人なのでしょうね).
 ちなみに,ワイモバイルに不満があるMVNOに,○天モバイルや○オンモバイルが含まれているとしたら,呆れてしますね.なにせ彼らは,本業で同じ様なことをやっていますし,企業体力は十分にありますから.

 私とは違く側面から分析していて,私よりも簡潔にまとめている記事を見つけたので,リンクを張っておきます.

「不当に安い」とワイモバイルやUQ mobileが他のMVNOから非難,はたしてそれは正しいのか
http://buzzap.jp/news/20170523-uqmobile-ymobile-mvno/


-----2017/06/10追記
 この件に絡んで,ネット上を少し調べてみたところ,「もし,サブブランドが優遇されているのなら,なぜMVNO各社は,サブブランドと同等の条件を要求せずに,サブブランドを自分たちと同じ条件に引き下げようとするのか?」といったコメントを見つけました.全くもって,同感です.日本人は,平等という名の,足の引っ張り合いが好きですよね.
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-----2017/06/11追記
UQ mobile、J:COM MOBILE、mineo――au系MVNOの最新動向 “サブブランド規制論”も
http://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/1706/10/news013.html
 こちらの記事には,はっきりと,「サブブランドについては、きっちり監督官庁に監視していただきたい」,というMVNOの関係者からの声が載っていました.私には,「役所にお願いして,サブブランドの足を引っ張ってもらう用意がある」,と言っているような気がしてなりません.どの業界でも,資本力の差がある企業が競っているのですから,ユーザの立場からすると,足の引っ張り合いだけは避けてほしいですね.
 記事の中には,「現状の枠組みでは、大手キャリアが料金の安いサブブランドを持つことに対する規制は、特に存在しない。そもそも、総務省がMVNOを推進するのは、競争を通じて、大手キャリアの料金値下げを促すため。この政策の目的を考えると、安易な規制を設けるわけにはいかないはずだ。」 ともあります.
 私自身が,ワイモバイルのヘビーユーザなので良く分かりますが,サブブランドには,大手キャリアにはない不便さがあります.その分,料金が安いのですから,大手キャリア,サブブランド,MVNOのそれぞれが,それぞれの特色を出していくべきだと思います.それが,最終的に,ユーザの利益になることが,一番重要なのですから.
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